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日本の再生可能エネルギー導入状況|現状・課題・先進事例を徹底解説
導入:日本の再生可能エネルギーは転換期を迎えている
気候変動対策とエネルギー安全保障の両面から、再生可能エネルギーの重要性が高まっています。日本では2012年の固定価格買取制度(FIT)導入を契機に太陽光発電を中心とした急速な拡大が進み、2024年度には再エネ比率が26.5%に達しました。政府が掲げる2030年度目標36〜38%の実現に向けて、さらなる導入拡大が求められています。
本記事では、日本における再生可能エネルギーの現状、地域ごとの導入傾向、直面する課題、そして政策支援や先進的な取り組み事例まで、最新データを基に包括的に解説します。
日本の再生可能エネルギー比率の推移と現状
2011年から2024年までの変遷
日本の電源構成における再生可能エネルギーの割合は、この10年余りで大きな変化を遂げました。2011年度時点では発電量全体の約10%にとどまっていた再エネ比率は、2012年のFIT制度導入を契機に急拡大し、2022年度には約21.9%まで増加しました。
2024年度の速報値では再エネ発電比率が約26.5%に到達し、2012年度と比較すると約2.4倍に増加しています。この成長は主に太陽光発電の急増によるもので、国内発電量に占める太陽光比率は2010年代初頭の1%未満から現在では約11%へと拡大し、水力発電の約8%を上回る主力電源となっています。
電源別の内訳と特徴
2024年度の再エネ電源構成を詳しく見ると、太陽光が約11%と最大のシェアを占め、次いで水力約8%、バイオマス約6%、風力約1%、地熱約0.3%となっています。
太陽光発電の累積設備容量は2024年度末時点で約7,600万kW(AC ベース)に達し、日本は中国・米国に次ぐ世界第3位の太陽光発電導入国となっています。一方、風力発電は年間導入量が44万kWと伸び悩んでいるものの、累積導入量は約640万kWに達しました。
再エネ電源の累積設備容量で見ると、日本は世界第6位に位置しており、国際的にも一定の存在感を示しています。
2030年度目標に向けた課題
政府は2030年度に再エネ比率36〜38%を目標に掲げています。2024年度の26.5%から約10ポイントの上乗せが必要であり、太陽光だけでなく風力や地熱など多様な電源のバランスの取れた導入拡大が求められています。
特に変動型再生可能エネルギー(VRE)である太陽光と風力の大量導入には、系統の安定性確保や調整力の拡充が不可欠です。
地域別に見る再生可能エネルギー導入状況
電力需給エリア別の再エネ比率
日本国内では地域によって再エネ導入状況に大きな差が見られます。電力需給エリア別の再エネ比率を見ると、最も高いのは東北電力管内の41.5%です。北海道や東北地方は風力や太陽光のポテンシャルが高く、需要に対する再エネ供給比率が高水準となっています。
北海道では太陽光・風力など変動型再エネ(VRE)の比率が20.8%と全国最高を記録しています。一方、大消費地である首都圏などでは発電設備の不足もあり、全国平均を下回る状況です。
九州地方の出力抑制問題
九州地方では日照条件の良さから太陽光発電が急増し、再エネ比率が高まる一方で、晴天時には出力抑制(発電量のカット)が頻発しています。2024年度は九州エリアで発電可能量の約4.7%が出力抑制により捨てられたと報告されており、これは全国平均の約1.5%を大きく上回ります。
この問題は、送電網の容量不足や需給バランスの調整能力の限界を示しており、系統増強や蓄電池の導入が急務となっています。
都道府県別の特色ある取り組み
都道府県単位で見ると、地域資源の違いによって再エネ電源構成に特色があります。
秋田県では風力発電が約4割を占め、地熱も約18%加わることで電力自給率が約88%に達しています。大分県は太陽光と地熱を組み合わせて地域電力自給率が7割を超え、鹿児島県も太陽光主体で約70%を賄っています。
内陸部の群馬県や栃木県、太平洋側の三重県などは太陽光発電の割合が非常に高く、発電量に占める太陽光比率が50%前後に達しています。一方、山間部の富山県や長野県、山梨県では豊富な水資源を活かした水力発電(特に小水力)が電源構成の1〜2割を占めるなど、水力依存の地域も存在します。
地産地消の拡大
「地産地消」の動きも各地で広がっています。環境エネルギー政策研究所(ISEP)の調査によれば、地域の民生部門等エネルギー需要に対し再エネ供給が100%以上となる自治体(地域エネルギー自給率100%以上)が全国で216市町村に上り、10年前(2011年度)の50市町村から飛躍的に増加しました。
再エネ導入が進んだ自治体では、地域の電力需要以上の電力を再エネで発電し、余剰を周辺地域に供給しているケースもあります。
再生可能エネルギー導入における主な課題
系統制約とグリッドの限界
再エネ電力を大量に導入するには送電網の強化が不可欠ですが、日本では地域間連系線の容量不足や系統接続ルールの制約により、新規発電設備が出力を十分に送電できない問題があります。
特に需要地から離れた北海道・東北・九州などで発電した電力を大都市圏へ送る系統容量が不足しており、発電側の出力抑制が発生しています。また、太陽光・風力は気象条件で発電量が変動するため、需要と供給のバランス調整が難しい点も系統運用上の課題です。
この出力変動による不安定さに対応するため、火力発電による調整力や蓄電池・需給調整市場の活用が求められています。
用地確保の困難さ
太陽光や風力で大規模な発電量を得るには広い設置面積が必要です。国土面積の狭い日本では、平地や浅海域といった適地の確保が容易でなく、用地取得コストや地形的制約が導入のボトルネックになっています。
森林伐採を伴うメガソーラー開発や景勝地での風車建設は環境破壊や景観悪化への懸念を招きやすく、適切なサイト選定と環境アセスメントが重要です。最近では農地上空を活用する営農型太陽光(ソーラーシェアリング)や、洋上風力発電の推進など、限られた土地資源を有効活用する取り組みが模索されています。
地域住民との合意形成
再エネ設備の設置にあたっては、地域社会との調和が欠かせません。太陽光パネルの反射光や風車の低周波音、景観への影響、さらには土砂災害リスクなどに対する住民の不安に丁寧に向き合う必要があります。
各地でメガソーラー計画への反対運動や風力発電所の建設差し止め訴訟なども起きており、事業者は地元説明会や環境保全措置を通じて理解を得る努力を重ねています。政府も再エネ特措法(再生可能エネルギー促進法)の改正により2024年から事業者の遵守事項を強化し、安全・景観面で適切な対応を義務付けました。
コスト負担の問題
再エネ発電のコスト低減も大きな課題です。日本ではFITにより高めの買取価格を設定したことで急速な導入拡大を実現しましたが、その買取費用は電気利用者の負担(再エネ賦課金)となり、総額が年間数兆円規模に達するなど社会的コストが問題視されました。
現在、太陽光発電の設備費用は初期に比べ大幅に低下しつつありますが、欧米に比べるとなお割高との指摘もあります。また、出力変動を平準化するための蓄電池導入や系統増強にも費用がかかるため、再エネ比率が上がるほどシステム全体でのコスト最適化が課題となります。
再生可能エネルギー普及を支える政策支援
FITからFIPへの移行
日本では再エネ導入拡大のため、2012年にFIT(固定価格買取制度)が導入されました。発電事業者が再エネ電力を一定価格で電力会社に買い取ってもらえる仕組みにより、高い買取価格設定で太陽光を中心に導入が急増し、再エネ比率向上に大きく寄与しました。
しかし、FITによる国民負担の増大や市場原理の阻害といった課題も表面化したため、政府はFIP(フィード・イン・プレミアム)制度へ移行しつつあります。FIPでは市場価格にプレミアムを上乗せする方式で、再エネ事業者が市場からの収入も得られるようにすることで、より自立的で効率的な運用を促しています。この移行は2022年度から段階的に進められ、太陽光や風力の新規案件ではFIP適用が一般的になりつつあります。
再エネ特措法の改正
再生可能エネルギー特別措置法(再エネ特措法)の改正が行われ、2024年4月から事業計画認定制度の厳格化や設備撤去費用の事前積み立て義務化など、適切な事業運営を担保するルールが強化されました。
無秩序な開発によるトラブルを防ぎ、地域と共生した持続可能な再エネ事業を促進する狙いがあります。同時に政府は電力系統の増強にも着手しており、再エネ大量導入に備えた送電網の整備計画や、蓄電池導入補助、次世代のスマートグリッド構築、需給調整市場の創設など、多方面から再エネ拡大を支える政策を展開しています。
地方自治体による独自支援策
地方自治体レベルでも再エネ普及を後押しする独自施策が活発です。多くの自治体が住宅用太陽光発電や蓄電池の設置補助金を用意しており、例えば東京都や神奈川県では家庭や事業所向けに数十万円規模の補助を提供しています。
長野県では再エネ事業から得られた収益の一部を県に納付させ、その資金を原資に再投資する「収益納付型補助金」制度を導入し、地域内で資金を循環させながら再エネ導入を促進するモデルを構築しています。兵庫県では事業者に対し無利子融資で設備導入資金を支援する制度を設けるなど、各自治体が創意工夫を凝らした支援策を展開しています。
地域新電力の台頭
地方自治体自らが地域新電力(公営または第三セクターの電力会社)を立ち上げ、地域の再エネ電力を調達・供給する動きも増えています。例えば静岡県浜松市は2015年に政令市初の浜松新電力を設立し、市内の再エネ電源を集約して地産地消を推進しています。
産業界・自治体の先進的な取り組み事例
浜松市:太陽光とバイオマスの組み合わせで高い自給率を実現
全国有数の日照時間と豊富な森林資源を持つ静岡県浜松市では、太陽光発電と木質バイオマス発電を組み合わせて電力の地産地消を推進しています。2015年設立の地域電力会社「浜松新電力」を通じ、市内の再エネ電力を市民や企業に供給し、その結果約80%という高い電力自給率を実現しました。
特に使われなくなったウナギ養殖池の跡地をメガソーラー用地に転用するなど創意工夫も行われています。バイオマス発電は太陽光発電と異なり24時間発電できるため、供給電力の40%を占めるバイオマスが安定供給に大きく貢献しています。浜松市は再エネによる地域経済循環のモデルケースとして注目されています。
鹿追町:畜産廃棄物からバイオガス発電で地域課題を解決
酪農が盛んな人口約5千人の北海道鹿追町では、畜産廃棄物を活用したバイオガス発電によって再エネと環境改善を両立しています。2007年に町営のバイオガスプラントを建設し、乳牛のふん尿から発生させたメタンガスで発電を開始しました。
このプラント稼働により周辺の悪臭問題も解消し、地域にクリーンな電力を供給できるようになりました。その成果を受け2016年には2基目のプラントも稼働し、処理能力・発電規模を大幅に拡大して町内電力需要の大部分を賄う電源となっています。鹿追町の取り組みは、小規模自治体でも地域資源を活かして脱炭素と地域振興を実現した好例です。
パナソニック草津工場:水素燃料電池でRE100を達成
産業界からは、再エネ100%による事業運営を目指す「RE100」の先進事例としてパナソニック株式会社の草津工場が挙げられます。同社は工場内に水素燃料電池と太陽光発電・蓄電池を組み合わせた自家発電設備「H2 KIBOU FIELD」を導入し、2022年4月から工場で消費する電力の100%を再エネ由来で賄う実証運用を開始しました。
純水素型燃料電池を本格活用して工場をRE100化する試みは世界初であり、エネルギーマネジメント技術を駆使した先端事例として国内外から注目されています。この取り組みにより、製造業における脱炭素化とエネルギー自給の可能性を示しました。
まとめ:日本の再生可能エネルギー導入の展望
日本の再生可能エネルギー比率は2024年度に26.5%に到達し、2030年度目標の36〜38%に向けて着実に前進しています。FIT制度導入以降、太陽光を中心に急速な拡大を遂げましたが、今後は風力や地熱など多様な電源のバランスの取れた導入が求められます。
系統制約、用地確保、地域住民との合意形成、コスト負担といった課題は依然として存在しますが、FIPへの移行や再エネ特措法の改正、地方自治体の独自支援策など、政策面での対応も進んでいます。浜松市、鹿追町、パナソニック草津工場などの先進事例は、地域の特性に合った再エネ資源を最大限活用することで、脱炭素社会の実現と地域経済の活性化を両立できることを示しています。
日本が脱炭素社会を実現していくうえで、これら先進的なモデルケースを横展開しつつ、技術革新と政策支援を組み合わせながら課題を克服していくことが重要です。