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自治体のためのRE100導入ガイド|再エネ100%実現への具体的ステップと成功事例

はじめに

気候変動対策が世界的な喫緊の課題となる中、企業だけでなく自治体においても脱炭素化への取り組みが加速しています。その中核となる施策の一つが、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄う「RE100」の考え方です。

2025年1月現在、世界で400社以上、日本でも約90社の企業がRE100に加盟しています。また、日本独自の枠組み「再エネ100宣言 RE Action」には392団体が参加し、うち68団体が既に100%再エネ電力を達成しています。

本記事では、地方自治体の環境担当者向けに、RE100の基本概念から参加条件、具体的な再エネ調達手段、導入メリット、課題解決策、そして国内外の先進事例まで、実践的な情報を網羅的に解説します。

RE100とは|国際イニシアチブの基本概要

RE100(Renewable Energy 100%)は、2014年に英国のNGO「クライメイトグループ」らによって設立された国際的なイニシアチブです。参加企業は、遅くとも2050年までに事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを公約します。

RE100の主な特徴

RE100は単なる環境宣言ではなく、具体的な目標設定と進捗報告が求められる実行型の枠組みです。参加企業には以下が義務付けられています:

  • 2050年までの100%再エネ電力化目標の設定と公表
  • 毎年の再エネ電力利用状況の報告(CDP形式での提出が一般的)
  • グループ全体でのコミットメント(一部子会社のみの参加は原則不可)

日本企業の場合、年間電力消費量が50GWh以上という参加条件がありますが、2020年の条件緩和により、以前の100GWhから引き下げられました。

RE Actionとの違い

年間電力消費量が50GWh未満の中小企業や自治体には、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)とIGESが運営する「再エネ100宣言 RE Action」への参加が推奨されています。RE Actionは、RE100と同様に2050年までの100%再エネ電力化を目指しますが、より小規模な組織でも参加しやすい国内版の枠組みとして機能しています。

自治体がRE100に取り組む意義

気候変動対策のリーダーシップ

自治体が率先してRE100相当の取り組みを行うことで、地域全体の脱炭素化に向けた強いメッセージとなります。環境省も2018年に公的機関として世界初のRE100アンバサダーに就任し、2030年までのRE100達成を目指す行動計画を策定しています。

首長の気候非常事態宣言やゼロカーボンシティ宣言と具体的行動が結びつくことで、住民や事業者への波及効果も期待できます。

温室効果ガス排出削減効果

公共施設(庁舎、学校、上下水道施設など)は自治体の温室効果ガス排出量の相当部分を占めています。電力由来のCO2排出をゼロにできれば、自治体運営における排出量を大幅に削減可能です。

実例として、オーストラリアのシドニー市は市運営施設を全て再エネ電力に切り替え、年間約2万トンのCO2排出削減を実現しました。

電力コストの安定化

再生可能エネルギーへの転換は、化石燃料価格の変動リスクからの解放を意味します。長期固定価格のPPA契約などを通じて電力コストの安定化が図れます。

シドニー市では、PPA契約により今後10年間で年間約50万ドルの電力コスト削減が見込まれています。また、米国バーモント州のバーリントン市は再エネ100%電力への転換後、8年間も電気料金を据え置くことができました。

地域経済への波及効果

地域内で再エネ電力を調達・生産すれば、エネルギー支出が地域内で循環します。地元の新電力会社から再エネ電気を購入することで、支払った電気代が地域の発電事業者や関連企業の収入となり、雇用や投資を生み出します。

山形県では県内の水力・太陽光からなる電力を県庁や市町村施設、県内企業に供給する仕組みを構築し、地域のエネルギー地産地消を推進しています。

RE100参加の具体的ステップ

ステップ1:目標設定

自治体として「◯年までに使用電力を100%再エネにする」目標を明確化し、社内の合意を得て対外的に宣言します。自治体であれば首長の宣言や議会決議などが該当します。

ステップ2:申し込み手続き

RE100の場合はThe Climate Group公式サイトから申込書を英語で提出します。日本語サポートが必要な場合はJCLPに相談できます。

RE Actionの場合はJCLP/IGESのサイトからエントリーし、参加費を支払います。手続きは日本語で完結し、中小規模の自治体でも参加しやすい設計となっています。

ステップ3:進捗報告

加盟後は毎年、再エネ電力の調達比率や取組状況を報告します。これはCDP(気候変動の情報開示プログラム)の質問書形式で提出するケースが一般的です。定期的な報告により、コミットメントの履行状況が確認され、透明性が担保されます。

ステップ4:具体的な取組開始

目標達成に向けて、再エネ電力の調達拡大計画を実行に移します。自社設備への太陽光パネル導入、電力契約のグリーン電力メニューへの切替、再エネ証書の購入など、複数の手段を組み合わせて再エネ比率を高めていきます。

再生可能エネルギー電力の調達手段

100%再エネ電力を実現するためには、複数の調達方法を組み合わせるのが一般的です。以下、代表的なスキームを紹介します。

オンサイト自家発電

自治体庁舎や施設内に太陽光パネルや小型風力などを設置し、発電した電力を直接消費する方法です。初期コストはかかりますが、発電した電力は燃料費ゼロで長期的に利用でき、災害時の非常用電源確保にも寄与します。

オンサイトPPA

自治体の施設の屋根上・敷地内に、専門事業者が太陽光発電設備等を設置し、その電力を長期契約で購入する手法です。設備の所有・管理は事業者側が行うため、自ら初期投資をせずに再エネ電力を調達できます。

契約期間は10~20年程度と長期になるため、途中解約の制約や敷地利用許可の調整が必要です。

オフサイトPPA

自治体の敷地外にある再エネ発電所(太陽光・風力・水力など)から発電された電力を、直接購入する契約形態です。送電網経由のオフサイトPPA(バーチャルPPAを含む)では、発電事業者にとって安定収入が見込め、需要家にとっては新たな再エネ電源の創出(追加性)が担保されるメリットがあります。

再エネ電力メニュー

電力小売会社が提供する「再生可能エネルギー由来電力」プランに契約切替する方法です。地域の新電力会社や大手電力会社も、再エネ100%(または非化石電源100%)のメニューを用意しています。

山形県では県庁舎を含む公共施設の電力契約をCO2フリー電気に切り替えた実績があり、都道府県庁舎での100%CO2フリー電力導入として北海道・東北初の事例となりました。

グリーン電力証書・非化石証書

再エネ発電の「環境価値」を証書化したものを購入し、自治体で使った電力の環境価値と相殺する仕組みです。発電所から離れた場所でも再エネ利用を可能にします。

非化石証書は2023年時点で市場価格が0.4円/kWh程度と比較的安価です。証書は比較的小口から購入可能であるため、自治体でも庁舎等の年間電力に相当する証書を購入して実質再エネ化を図るケースがあります。

J-クレジット

国の認証する「J-クレジット」は、省エネや再エネ導入によるCO2削減量をクレジット化したものです。RE100の達成には再エネ由来のJ-クレジットしか利用できませんが、購入し無効化すると「再エネ利用証明書」が発行され、CDPやRE100報告に使用可能です。

J-クレジットは誰でも創出・売買でき、有効期限がない利点がありますが、再エネ由来のものは需要が高く、2023年時点で約1.401円/kWh程度と非化石証書より高めの価格設定となっています。

導入における課題と解決策

初期コスト・ランニングコストの課題

自前の再エネ設備を導入する場合、設備費用が大きなハードルです。また、再エネ電力メニューや証書を利用する際も、通常の電力より単価が高いケースがあります。

解決策:

  • 環境省や経産省の自治体向け再エネ導入補助制度の活用
  • 第三者所有モデル(PPA)による初期費用の抑制
  • 自治体間・公共施設間での共同調達によるスケールメリット
  • 環境省による電力消費量の多い施設を束ねた共同調達実証の活用

制度・調達プロセス上の課題

公共調達のルール上、電力契約の切替や新たな事業者との長期契約には入札手続などをクリアする必要があります。また、自治体職員にとってエネルギー市場や証書取引の知識が不足しているケースもあります。

解決策:

  • 環境省の「公的機関のための再エネ調達実践ガイド」の活用
  • 庁内横断的プロジェクトチームの設置
  • 外部専門家やESCO事業者、地域新電力会社との連携
  • JCLP等が開催するワークショップや研修への参加

エネルギーミックスの課題

再エネは天候に左右されるため、100%再エネにするには余剰と不足をどう補うかという問題があります。

解決策:

  • 段階的な目標値の引き上げ(まず50%、次に80%など)
  • 複数手段のポートフォリオ的組み合わせ
  • 地域特性を活かした再エネ活用(バイオマス、小水力、風力など)
  • 需要側の省エネ施策との併用
  • 蓄電池の活用や昼夜のハイブリッド運用

国内外の先進事例

山形県(日本)

山形県は「ゼロカーボンやまがた2050」を宣言し、県庁舎の使用電力を100%CO2フリー電力に切り替えました。県や地元企業が出資する新電力会社「やまがた新電力」が、県企業局の水力・太陽光発電や県内民間の再エネ電源から電力を調達し、2024年4月から県庁舎および県内市町村施設・民間施設へ供給を開始しています。

都道府県庁舎での100%CO2フリー電力導入として北海道・東北初の事例であり、地域内再エネ活用と共同調達のモデルケースとなっています。

シドニー市(オーストラリア)

2020年7月より市運営施設の使用電力を100%再生可能エネルギーに完全移行しました。市内の街路灯や市庁舎、図書館、プール等あらゆる公共施設が対象で、ニューサウスウェールズ州内の大型風力発電所(270MW)と太陽光発電所(120MW)との長期電力購入契約により調達しています。

この取り組みにより年間2万トンのCO2削減と電力コスト削減を実現し、今後10年間で年間約50万ドルの電力コスト削減が見込まれています。

バーリントン市(米国)

人口約4万人の小都市ながら、2014年に全米で初めて都市の電力供給を100%再生可能エネルギーで賄いました。地元の森林資源を使う50MWの木質バイオマス発電所、水力発電所、風力発電(10MW)、ソーラーパネルなどを組み合わせています。

再エネ100%でも電気料金は上がらず、8年間も電気代据置を可能にしました。地産木質バイオマスによる発電は化石燃料購入費を地域内に留め、電力収入も市に還元されるため、経済的にも成功した事例として知られています。

アスクル株式会社(日本)

オフィス用品通販大手のアスクルは、2017年に日本企業としていち早くRE100に加盟し、2030年までに100%再エネ電力化という積極的目標を掲げています。小売電気事業者の「GREENa RE100プラン」を契約し、電力使用量相当のグリーン電力証書を取得することで実質再エネ化を達成しています。

まとめ

RE100は企業が電力の100%再エネ化に取り組む国際枠組みですが、その考え方は自治体にも十分応用可能です。再エネ調達の手段は、オンサイト/オフサイトPPA、非化石証書、J-クレジットなど多岐にわたり、組み合わせることで実現への道が開けます。

自治体がRE100相当の取組を行うことは、環境目標の達成だけでなく、電力コストの安定化、地域経済の活性化など多面的なメリットがあります。初期コストや制度面の課題はありますが、補助金活用、共同調達、専門家との連携などで克服可能です。

山形県、シドニー市、バーリントン市など、国内外で先進事例が既に生まれています。重要なのは、自組織の規模や条件に応じて適切な手段を選び、段階的にでも着実に前進することです。

次のアクション

まずは自組織の年間電力使用量や再エネ率を把握することから始めてください。その上で、RE100やRE Actionの公式情報をチェックし、参加条件や手続きを詳細に確認しましょう。庁内外で目標を共有し、具体的プラン策定に取り掛かり、必要に応じて見積もり依頼やプロジェクト化に踏み出すことが重要です。

脱炭素は待ったなしの状況ですが、道筋は既に示されています。小さくても一歩を踏み出し、成功事例に続いてください。

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