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高圧・特別高圧需要家向け再生可能エネルギー電源の比較と選び方

高圧・特高需要家が直面する3つの課題

工場や大型施設など大量の電力を消費する高圧・特別高圧需要家(以下、高圧・特高需要家)にとって、エネルギー戦略の見直しは喫緊の課題となっています。電力コストの上昇、脱炭素化への対応、そして事業継続性の確保という3つの重要な課題に、多くの企業が直面しています。

電力コストの急激な上昇

2021年から2022年にかけて、電気料金は大幅に値上がりしました。高圧区分では約10.16円/kWh、特別高圧区分では約9.51円/kWhもの上昇が記録されています。電力使用量の多い工場ほど、このコスト増加の影響は深刻で、企業の競争力や事業継続に直接的な影響を及ぼしています。

脱炭素化への対応

気候変動への対応や企業のESG評価向上のため、CO₂排出削減が強く求められています。RE100への参加やサプライチェーンに対する脱炭素要請が進む中、自社の使用電力を再生可能エネルギー100%に転換する目標を掲げる企業が増加しています。2023年2月時点でRE100に参加する企業は世界で397社に達し、そのうち日本企業は78社を数えます。

事業継続計画(BCP)の強化

大規模停電や災害時にも電力供給を確保することは、生産ラインや重要設備の稼働を維持するため不可欠です。太陽光発電や蓄電池を自社設備に備えることで、停電時でも最低限の事業活動を継続できる体制を構築できます。エネルギー自給によるレジリエンス向上は、顧客からの信頼を高め事業リスク低減にもつながるため、多くの補助金制度でも「非常時の電源確保」が重視されています。

再エネ導入の2つのアプローチ

高圧・特高需要家が再エネを活用する方法には、大きく分けて自家消費型と再エネ電力の調達型の二つがあります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に応じた選択が重要です。

自家消費型(オンサイト発電)

自社の敷地や屋根に太陽光パネルや風力タービンなどを設置し、発電した電力を自社施設内で直接消費する方法です。発電した電気をそのまま使うため送配電網の利用を抑えられ、電力会社からの購入量削減によるコスト低減効果が期待できます。また、発電設備を保有することで停電時に自立運転することも可能で、BCP強化につながります。

デメリットとしては、初期導入コストや設備保守が必要なこと、十分な設置スペースや適切な自然条件が確保できない場合は発電量が限られることが挙げられます。

再エネ電力調達型(オフサイト利用)

自社で発電設備を持たずに、他所で発電された再エネ電力を購入する方法です。具体的にはPPA(Power Purchase Agreement)契約による再エネ電力の長期購入や、電力会社の提供する再エネメニューへの電力切替などがあります。

調達型のメリットは、自社に適地がなくても大規模な再エネ電力を確保できる点です。キリンホールディングスは複数工場の購入電力を再エネ100%に切り替え、2023年1月には福岡工場と岡山工場で購入電力100%再エネ化を達成しています。初期投資が不要で、第三者所有モデルの場合は設備運用の手間も省けます。

一方のデメリットは、電力調達コストが契約単価に依存するため自家消費に比べ長期的な経済メリットが小さい場合があること、系統停電時には供給が止まるため非常用電源にはならないことです。

FIP制度とバーチャルPPAの活用

2022年度より導入されたFIP制度(フィードインプレミアム)は、再エネ発電事業者が市場価格で電力を売電し、その市場価格とあらかじめ定めた基準価格との差額をプレミアムとして受け取る仕組みです。これは固定価格で買い取るFIT制度の欠点を補完し、市場連動型で収入を安定させる仕組みとなっています。

FIPのおかげで発電事業者は電力市場で売電しながら一定の収益を確保できるため、企業と発電事業者が直接契約を結ぶPPAモデルが進めやすくなりました。ソニーグループではFIP適用下で約2MW規模の太陽光発電事業者とバーチャルPPA契約を結び、発電量に応じて一定の収入を得られる仕組みを構築しています。

5つの再エネ電源を徹底比較

高圧・特高需要家にとって主要な再生可能エネルギー電源である太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱について、それぞれの特徴を比較します。

太陽光発電:自家消費に最適

太陽光発電は日中のみ発電し、天候により出力が変動します。設備コストは近年大幅に低下し、大規模設備で均等化発電原価(LCOE)は約10円/kWh前後と電力料金並みに達しています。住宅向け小規模では14円/kWh程度です。

変動電源であるため単独では常時安定供給は困難ですが、蓄電池と組み合わせることで発電と需要の時間帯ミスマッチを補完できます。停電時は蓄電池と組み合わせれば最小限の電力を供給可能です。

日射条件の良い広い場所が必要で、工場屋根や遊休地への設置が一般的です。都市部では屋根設置が中心となり、大規模導入はスペースや耐荷重制約があります。自家消費型導入が盛んで、需要の多い昼間に発電が重なるため工場での即時利用とコスト削減に直結します。

風力発電:夜間電力に有効

風力発電は風況に左右される不規則変動電源です。陸上風力のLCOEは概ね12円/kWh程度と低廉ですが、洋上風力は規模大でコスト高く20円/kWh超となる場合もあります。

天候依存で出力は不安定で、無風時は発電ゼロとなります。複数基運用で平滑化するものの、系統電力や蓄電池とのハイブリッドで安定供給を図る必要があります。

強い風が得られる立地が必要で、海岸沿いや山間部などに限られます。都市部や敷地狭小な工場での設置は難しく、単独での自家消費導入例は少なめです。多くは遠隔地の風力発電所からの調達で活用され、夜間電力を賄う用途で評価されています。

水力発電:安定供給の優等生

水力発電は河川などの水の落差や流量を利用し、出力は比較的安定しています。既存大規模水力は低コスト電源ですが、新規開発は限定的です。中規模水力でLCOE約10円/kWhと低廉ですが、小水力では地点ごとの建設費が大きく20円/kWh超となる場合もあります。

24時間連続運転可能で出力も調整しやすく、系統のベース電源や調整力として優秀です。燃料不要で長期にわたり安定供給が可能です。

有効落差や十分な水量がある地点に限られ、新規ダム建設は環境制約が大きくなります。自家消費目的での導入は立地が限られるため稀で、主には電力会社等から水力由来のCO₂フリー電力を調達して利用する形が一般的です。

バイオマス発電:24時間稼働可能

バイオマス発電は木質チップや廃棄物等を燃焼、またはバイオガスを燃料として発電します。燃料供給量に応じて安定した出力が得られ、出力調整も火力同様に可能です。

燃料調達コストがかかり、LCOEは30円/kWh前後と高めです。燃料を輸入に頼る場合コストが増加しますが、木くず等未利用資源活用なら経済性向上の余地があります。

燃料さえ確保できれば24時間発電が可能で、出力制御も容易です。天候に左右されず、調整力や熱供給も兼ねられます。供給安定性は燃料供給チェーンの安定性に依存します。

自社で大量の有機系廃材や副産物を出せる業種(製紙、食品加工など)では、自家用バイオマス発電・熱供給設備を導入しエネルギー自給する例があります。一般の工場では自前導入ハードルが高く、多くはFIT/FIP適用のバイオマス発電所から電力や非化石証書を調達する形で利用されています。

地熱発電:ベースロード電源

地熱発電は地下の高温蒸気・熱水を利用してタービン発電を行い、天候や昼夜に関係なく安定発電します。年間稼働率80%以上と高く、出力は資源量により一定です。

立地調査や掘削にコスト・時間がかかりますが、運転後の燃料費は不要です。LCOEは約11円/kWh程度との試算もあり比較的低廉ですが、規模によっては15円/kWh超える例もあります。

ベースロードとして365日連続運転可能で、出力変動が少なく、他電源の調整役も担えます。

火山帯の限られた地域に資源が存在し、国立公園や温泉権益との調整が必要で、開発可能地点は限定的です。大半が電力事業者による開発・運用で、自社工場が直接地熱発電所を持つケースはほぼありません。地熱発電所の電力を調達する形で間接的に利用する形となります。

立地条件別の最適な選択肢

再エネ導入の可否や適性は、その企業の立地条件によって大きく左右されます。

都市部事業所の再エネ戦略

都市部では敷地や屋根面積が限られるため、大規模な太陽光パネルや風車を設置するのは難しくなります。建物の耐荷重制約でパネルを十分載せられないケースもあります。

このような都市部では、小規模でも設置しやすい太陽光発電がまず検討されます。近年では薄型軽量パネルの登場により、耐荷重問題を克服して屋根全面に太陽光を敷き詰める事例も出てきました。

東京ガスと三井ホームの取り組みでは、重量を約60%削減したパネルで埼玉工場の屋根1MW分を有効活用し、余剰電力はバーチャルPPAで他工場に環境価値を融通するモデルケースを実現しています。本取り組みでは、東京ガスが三井ホーム埼玉工場の屋根に1MW級の薄型軽量太陽光パネルを設置し、余剰分の環境価値を環境証書として提供するバーチャルPPAを併用することで、課題を解決しながら再エネの普及促進に寄与しています。

地方・郊外の事業所の選択肢

地方(郊外・工業団地など)の事業所では比較的広い土地が確保しやすく、太陽光パネルの大規模設置や場合によっては中小規模の風車設置も検討できます。

日照条件が良ければメガソーラー級の太陽光発電所を構内に設置し全量自家消費することも可能です。工場敷地が河川沿い・水路沿いであれば小水力発電(マイクロ水力)を導入するポテンシャルもあります。

農林業系の工場では、自社から出る木質バイオマスや有機廃棄物を燃料にしてバイオマスボイラー+発電機を導入し、蒸気と電力を供給するコージェネレーションでエネルギー自給する例も報告されています。

実際の導入事例

菓子メーカーの不二家では、複数の生産工場(富士裾野工場、吉野ヶ里工場、秦野工場)の屋根上に太陽光パネルを合計数MW規模で設置し、工場内で発電電力を直接使用することで電力使用量とCO₂排出を削減しています。2030年度末までにCO₂排出量を2013年度比で46%削減することを目標に掲げています。

大手スーパーのイオンでも、店舗や倉庫の屋上に太陽光発電システムを導入し、さらには第三者所有モデル(PPA)による設置拡大も進めています。

大和ハウス工業のように、自社グループで風力・太陽光・小水力など発電事業を行い、トラッキング付き非化石証書を取得してグループ内需要に充当することで「再エネ自給自足」を目指す例もあります。同社グループでは、2007年から風力発電所の建設や太陽光発電、水力発電など、再生可能エネルギーによる発電事業を進めており、2018年にはEP100、RE100へ同時加盟しています。

まとめ:最適な再エネミックスを構築する

高圧・特高需要家にとって、再生可能エネルギーの導入は電力コスト削減、CO₂排出削減、そして事業継続性の確保という3つの課題への包括的なソリューションとなり得ます。

太陽光発電は自家消費型導入において最も実績が多く、コスト面でもグリッドパリティを達成しています。風力発電や水力発電は安定した電力供給源として、調達型での活用が進んでいます。バイオマスや地熱は、立地条件が合えば24時間安定稼働が可能な貴重な電源となります。

重要なのは、「どの再エネ源が最適か」はケースバイケースであり、組み合わせによる相乗効果も狙えるという点です。例えば日中は太陽光で賄い、夜間は水力や風力由来の電力を購入する、非常時には蓄電池やバイオマス自家発電でバックアップするといった具合に、複数の手段を組み合わせることでエネルギーの安定供給と経済性・環境性のバランスを取ることができます。

FIP制度やバーチャルPPAなど、新しい仕組みも活用しながら、自社の課題に即した最適な再エネ活用方法を見出すことで、持続可能かつ強靭なエネルギー経営への転換が可能になるでしょう。

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