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製造業中小企業の脱炭素化|コスト削減から競争力強化まで実践ガイド

カーボンニュートラルへの潮流が加速する中、製造業の中小企業にとって脱炭素化は避けて通れないテーマとなっています。大手企業がサプライチェーン全体での温室効果ガス削減を重視し始めた今、中小企業の対応は事業継続の鍵を握ると言えるでしょう。本記事では、脱炭素化がもたらす経済的・社会的メリットから直面する課題、そして活用できる支援策まで、製造業中小企業が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

製造業中小企業が脱炭素化に取り組むべき理由

日本政府は2020年に2050年カーボンニュートラル実現を宣言し、2030年までに温室効果ガスを46%削減する目標を掲げています。この流れは製造業の中小企業にも大きな影響を及ぼしています。

中小企業が日本全体の温室効果ガス排出量の約2割を占めることから、政府は2023年2月に閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」で、サプライチェーン維持・強化の観点からも中小企業の脱炭素推進が必要だと明記しました。

実際、取引先から脱炭素化への協力を要請された中小企業の割合は、2020年の7.7%から2022年には15.4%へと倍増しています。この傾向は今後さらに加速する可能性が高く、早期の対応が競争力維持につながります。

脱炭素化がもたらす経済的メリット

エネルギーコストの大幅削減

脱炭素化の最も直接的なメリットは、エネルギーコストの削減です。省エネルギー設備の導入や生産プロセスの効率化により、電力・燃料などのコストを大幅に抑えることができます。

多くの中小企業が脱炭素化の効果として光熱費・燃料費等のコスト削減を挙げており、業種によっては高効率機器への更新でエネルギー使用量を半分近く削減できた例も報告されています。年々高騰する原料費への対策としても、省エネは重要な経営戦略となっています。

充実した補助金・税制優遇

政府は脱炭素設備への投資を資金面から支援する制度を充実させています。

経済産業省の「カーボンニュートラル投資促進税制」では、中小企業に対して通常より高い減税控除率を適用し、脱炭素関連設備への投資負担を軽減しています。申請には炭素生産性の計算が必要ですが、経産省が自動計算ツールを公開しており、活用のハードルは下がっています。

また、省エネルギー投資促進補助金では高効率なボイラーや変圧器、LED照明など汎用設備の更新に対し費用の1/3~1/2を補助します。環境省のSHIFT事業補助金では、工場の省CO₂化設備導入に対し1/3補助、一部メニューでは3/4補助が受けられます。

これらの支援策を組み合わせることで、設備更新に伴う初期コスト負担を大きく抑えることが可能です。

サプライチェーンでの選ばれる企業に

脱炭素に積極的な姿勢は、取引先からの評価向上につながります。グローバル企業を中心に、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減を重視する動きが急速に広がっており、環境に配慮した優良企業として選ばれやすくなります。

実際、脱炭素化に取り組んだ企業では、既存取引先からの受注拡大や新規顧客の獲得といった収益機会を得て、売上高にプラスの影響が生じたケースも報告されています。環境対応は単なるコストではなく、新たなビジネス機会を生み出す投資と捉えることができます。

資金調達での優位性

脱炭素経営の推進は金融機関からの評価も高めます。近年、環境・ESGに配慮した企業へのグリーンローンやサステナビリティリンクローンなど融資優遇策を導入する金融機関が増えています。

脱炭素への取組は企業の長期的な価値を測る重要な指標となりつつあり、環境対応が進んだ企業は低利融資など好条件で資金調達できる可能性が高まっています。資金繰り面でも、脱炭素化は明確なメリットをもたらします。

企業価値を高める社会的メリット

地域社会との信頼関係強化

環境に配慮した経営は地域社会との信頼関係を高めます。自社の排出削減やクリーンなものづくりは地域の環境改善にも寄与し、地元住民や自治体から地域に貢献する企業として好意的に受け止められます。

環境に先進的な取組はメディアに取り上げられ、問い合わせが増加することで販路拡大につながった例もあります。地域イベントや官民プロジェクトへの参画機会が増えることで、地元でのネットワーク拡大や行政からの協力も得やすくなるでしょう。

従業員のモチベーション向上

脱炭素への貢献は社員の誇りとなり、社内のモチベーション向上につながります。多くの中小企業が従業員の意識向上を脱炭素化の重要なメリットとして挙げています。

自社の取り組みが社会課題の解決に寄与していることを実感できれば、社員のエンゲージメントが高まり、離職防止や生産性向上にも好影響を及ぼします。環境に配慮する企業で働きたいと考える求職者も増えており、優秀な人材獲得においても有利に働く可能性があります。

ブランドイメージの確立

環境対応に熱心な企業というブランドイメージ確立は、顧客や取引先からの評価アップにつながります。多くの中小企業が脱炭素化の効果として知名度・企業イメージの向上を期待しています。

脱炭素への取り組みを自社のPRやマーケティングに活かすことで、製品・サービスの付加価値向上や差別化を図ることができます。環境先進企業としての認知度向上は、中長期的な競争優位性の構築に貢献します。

脱炭素化推進における主な課題

初期投資の負担

脱炭素化には高性能な設備への更新や再生可能エネルギー導入など、多額の初期投資が必要となる場合が多く、中小企業にとって大きなハードルとなっています。

「対応コストが高い」「コストに見合った収益を上げられない」といった資金面の課題を挙げる企業は少なくありません。また、「現有設備では対応が難しい」という声も多く、老朽設備を抱える企業ほど設備更新の負担が重くなりがちです。

投資回収に時間がかかることへの懸念から、脱炭素に踏み切れないケースもあります。補助金や税制優遇の活用が、この課題を乗り越える鍵となります。

専門知識・人材の不足

温室効果ガス排出量の算定、削減計画の策定・実行、効果検証など、脱炭素経営には幅広い専門知識と経験が求められます。しかし中小企業ではこうしたノウハウを持つ人材が不足しており、「GXを推進する人材が足りない」と課題視する声が多く聞かれます。

特に小規模事業者では日々の業務で手一杯で、どのように推進すればよいか分からないと感じるケースも多く、情報収集や計画立案を担う人的リソースの確保が難しい現状があります。

効果測定と認証の煩雑さ

脱炭素の取り組み効果を数値で見える化したり、公的な認証を取得したりするプロセスも、中小企業には煩雑に映ります。

自社のCO₂排出量を算定する際に、何が排出量算定の対象になるのか分からないと戸惑う企業もあります。さらに、温室効果ガス排出量の報告書作成や、ISO14001・エコアクション21などの環境マネジメント認証、SBT認証などを取得・維持するには相応の専門知識とコストが必要です。

このように効果測定や認証の手間が負担となり、取り組みのハードルを上げている面もあります。

中小企業を支える政策と支援制度

カーボンニュートラル目標と基本方針

政府は中小企業の脱炭素化を後押しする政策を積極化しています。2023年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」では、中小企業のカーボンニュートラル推進が必要と明記されました。

中小企業が日本全体のGHG排出量の約2割を占めること、そして我が国産業の強みであるサプライチェーンを維持・強化する観点からも、中小企業の取り組みは不可欠とされています。

活用できる支援策

経済産業省・環境省・中小企業庁など関係省庁は、中小企業向けの支援策を拡充しています。

専門家派遣・エネルギー診断:
環境省や中小企業支援機関を通じて、省エネ診断士など専門家が企業を訪問し、エネルギー使用状況の診断や脱炭素化計画策定を支援する事業が各地で行われています。診断費用は国や自治体が負担するケースが多く、東京都等では中小企業向けに無料のエネルギー効率診断や技術アドバイスを受けられる窓口が設置されています。

資金調達支援・融資制度:
政策金融公庫による低利の環境対応融資、民間銀行によるサステナブルファイナンス支援など、中小企業が脱炭素投資のための資金を得やすくする施策も進んでいます。信用保証協会によるSDGs評価融資制度など、環境経営に取り組む中小企業を金融面から優遇する仕組みも広がっています。

カーボンクレジット制度:
国が運営するJ-クレジット制度では、省エネ設備導入や再エネ発電によるCO₂削減量をクレジットとして認証し、他社に売却することが可能です。中小企業が自社の削減努力をクレジット化すれば、新たな収入源となる可能性があります。

中小企業庁や中小機構も情報提供や研修を通じて中小企業のGX推進を後押ししています。中小機構は脱炭素経営の手引きサイト「J-Net21」にてノウハウや支援策を公開し、専門家による無料相談窓口やハンズオン支援事業も開始しました。

製造業における脱炭素化成功事例

実際に、すでに多くの中小企業が脱炭素経営に取り組み成果を上げています。環境省は全国28社の中小企業の成功事例集を公開しており、それぞれの取り組み内容、得られたメリット、事業拡大への展開などが報告されています。

株式会社ミヤハラ(山口県・機械製造業)の例:
老朽化した空気圧縮機を高効率型に更新し、工場の空調設備や照明を省エネ型(LED照明)に交換しました。その結果、年間CO₂排出量を約120トン削減し、エネルギー消費26万kWh削減を達成しています。

株式会社ニシエフ(山口県・輸送機械製造業)の例:
工場屋根に遮熱効果のある自家消費型太陽光発電パネルを設置しました。年間CO₂排出量を約66トン削減し、電力使用量の削減により年間約320万円の光熱費を削減しています。遮熱型パネルにより工場内の温度上昇が抑えられ、従業員の作業環境も改善されました。

これらの企業では、脱炭素化投資によってエネルギーコストを削減すると同時に、生産効率の向上や従業員の作業環境改善といった副次的な効果も得ています。

別の事例では、排出削減と売上増加を両立した他社の成功例に刺激を受け、自社でも脱炭素をきっかけに新たな価値創造や事業展開を模索したケースもあります。ある中小企業(ブライダル業)では脱炭素の取組を自社サービスに組み込み、コスト削減だけでなく成長戦略へと展開する可能性を見出したと報告されています。

このように、脱炭素経営を自社の強みづくりや新規事業創出につなげた成功例も増えつつあります。

まとめ:脱炭素化を成長の機会に

日本の製造業に属する中小企業にとって、脱炭素化への取り組みはエネルギーコスト削減、補助金・税制優遇の活用、取引機会の拡大、資金調達面での優遇など、多くの経済的メリットをもたらします。さらに、地域社会との関係強化、従業員のモチベーション向上、ブランドイメージの確立といった社会的メリットも見逃せません。

一方で、初期投資の負担、専門知識・人材の不足、効果測定・認証手続きの煩雑さといった課題も存在します。しかし、政府や支援機関による後押し策が拡充される中、これらのサポートを上手に活用すれば、中小企業でも脱炭素経営を負担ではなく成長のチャンスとすることが可能です。

カーボンニュートラルに向けた潮流は今後ますます加速すると予想されます。経済的・社会的メリットを享受しつつ課題を克服していくことで、地域に根ざした持続可能な企業として発展していく道が開けるでしょう。早期の対応が、将来の競争優位性を左右する時代が到来しています。

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