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RE100対応で電力切替が最初に検討される理由|実務で押さえるべきポイントを解説

RE100とは何か?電力切替が最初に検討される背景

企業の脱炭素対応が待ったなしの状況になっています。特に製造業では、取引先から「再生可能エネルギーの使用状況を報告してほしい」「CO2排出削減の計画を示してほしい」といった要請が増えており、対応の遅れが取引継続のリスクにもなりかねません。

こうした中で注目されているのが、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際イニシアチブ「RE100」です。世界の大手企業が加盟し、サプライチェーン全体での脱炭素を求める動きが加速しています。

RE100と企業の脱炭素ニーズの高まり

RE100は「Renewable Energy 100%」の略で、企業が事業運営に必要な電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的な取り組みです。2024年時点で世界400社以上が参加しており、日本企業も多数加盟しています。

この動きは大企業だけの話ではありません。欧州を中心にサプライチェーン全体での脱炭素化が求められており、例えば欧州連合(EU)は域外から輸入される鉄鋼やアルミ等に炭素税を課すCBAM制度を2026年導入予定です。将来的には自動車や機械製品にも「製造時のCO2排出」が事実上の貿易条件になる可能性があります。

つまり、日本の製造業も自社工場はもちろん、協力会社も含めて再エネ化を進めないと、国際競争力を維持できなくなるリスクがあるのです。

電力起源のCO2(Scope2)が占める割合と早期対策の重要性

企業の温室効果ガス排出は、Scope1(自社の直接排出)、Scope2(購入電力等の間接排出)、Scope3(サプライチェーン排出)の3つに分類されます。

特に製造業やオフィスビルでは、Scope2の購入電力由来のCO2排出が全体の大きな割合を占めています。例えば、電力多消費型の工場では総排出量の50%以上がScope2というケースも珍しくありません。

使用電力を再エネに切り替えることは、このScope2排出量の削減に直結します。つまり、自社の直接間接排出の多くを短期間で削減できる効果的な手段なのです。脱炭素対応でまず電力契約の見直しが挙げられるのは、この「効果の大きさ」が理由の一つといえます。

電力切替が”最初の一手”として有効な理由

数ある脱炭素施策の中で、なぜ電力契約の切替が初手として推奨されるのでしょうか。主な理由は3つあります。

即効性 – 使用電力を再エネにすれば翌月からCO2削減効果が現れる

電力契約を再エネメニューに切り替えれば、切替完了後すぐにCO2排出削減効果が得られます。契約手続きから実際の供給開始まで、通常1〜2ヶ月程度です。

他の省エネ施策、例えば高効率設備への更新や太陽光パネルの設置などは、設備投資の予算確保から工事完了まで半年〜数年かかることも珍しくありません。それに比べ、電力切替は「契約変更だけで実施できる」ため、迅速に成果を出せる点が大きな魅力です。

取引先から「来期までにCO2削減計画を示してほしい」と要請された場合でも、電力切替なら短期間で対応できます。

手軽さ – 設備投資ゼロ・低ハードルで始められる脱炭素策

電力会社の再エネプランに切り替えるだけでよく、自社設備への大がかりな投資は一切不要です。実際の契約で必要になるのは、現在利用している電力会社の「電気ご使用量のお知らせ(検針票)」と「支払い用のクレジットカード」の2点のみ。申し込みはウェブサイト上から行い、約5分で完了します。

また、電力会社を替えても送配電網は共通のインフラとして位置づけられているため、停電のリスクが高まったり、復旧が後回しになることはありません。電力事業は発電、送配電、小売りで事業者が分かれており、送配電は共通なのです。

「再エネ電力を使うには自社に太陽光設備を設置しないといけない」という誤解もありますが、実際には設備投資不要で契約切替だけで再エネ電力を利用できます。

社外へのアピール効果 – 「使用電力100%再エネ」は分かりやすく評価される

電力の再エネ化は、脱炭素の取り組みとして社外に非常に伝わりやすい成果です。「当社は使用電力を100%再生可能エネルギーに切り替えました」という表現は、専門知識がない人にも理解しやすく、ブランドイメージ向上につながります。

RE100加盟企業にはトラッキング付証書が求められるなど、国際的な評価基準でも電力の再エネ化は重要な指標となっています。CDP(気候変動に関する情報開示プログラム)やESG評価でも、再エネ電力の利用状況は評価項目に含まれます。

取引先への報告でも、「電力由来のCO2排出は実質ゼロです」と明確に示せることは、サプライヤー評価の維持・向上に直結します。

再エネ電力を調達する方法には何がある?

企業が再エネ電力を手に入れる代表的な手法を整理します。本記事では特に「電力会社の再エネメニュー利用」に焦点を当てますが、他の選択肢も簡単に紹介します。

電力会社の再エネメニューに切り替える – 最も簡便な方法

現在契約中の電力会社や新電力が提供する「CO2フリー電気」「再生可能エネルギープラン」への変更が、最も手軽な方法です。手続きは契約変更のみで完結し、特別な設備や工事は不要です。

ただし、プランを選ぶ際には電源構成や付随する証書の内容を確認することが重要です。例えば、「再エネ100%」と謳っていても、その内訳がFIT(固定価格買取制度)由来なのか、非FIT由来なのか、またトラッキング情報(発電所の特定情報)が付いているかどうかで、RE100などの国際基準への適合性が変わります。

小さく始めて実績をつくり、そこから徐々にスケールアップしていくのが現実的なアプローチです。例えば、まずは本社ビルの電力を再エネ化し、効果とコストを検証した上で主要工場へ展開するといった段階導入が推奨されます。

環境価値証書(非化石証書・グリーン電力証書)の購入 – 契約はそのままで再エネ化

電力契約自体は従来どおりにしつつ、別途「環境価値証書」を購入して自社使用電力を再エネ相当とみなす方法もあります。

これは、テナント入居などで電力会社を自由に選べない場合や、複数拠点で契約会社がバラバラで統一切替が難しい場合に有効な選択肢です。非化石証書(再エネ指定)やグリーン電力証書を必要量購入し、自社名義で償却することで、電力使用に伴うCO2排出を実質ゼロにできます。

ただし、証書にも種類があり、RE100報告に使えるものと使えないものがあるため、購入前に確認が必要です。

自社で再エネ発電(オンサイト)やオフサイトPPA – 中長期的な取り組み

将来的な選択肢として、自社で太陽光発電設備を設置する方法や、発電事業者と直接契約するPPA(電力購入契約)手法があります。

これらは初期投資や長期契約のハードルがありますが、より追加性(新たな再エネ設備を増やす効果)が高い手法として評価されます。まずは電力切替で短期的な成果を出しつつ、余力があればPPA等の検討を進めるという段階的アプローチが現実的です。

電力切替の際に押さえておくべきポイント

いざ再エネ電力に契約変更する際、見落としがちな重要事項を3つ整理します。

電源と証書の情報を確認 – 本当に「再エネ100%」と言える内容か

再エネメニューの電源構成と付随する非化石証書の種類を必ず確認しましょう。特に重要なのは以下の点です。

トラッキング情報の有無:RE100では、電力の環境価値を証明するためにトラッキング付きの非化石証書が求められます。トラッキングとは、どの発電所で作られた電気かを特定できる情報のことです。トラッキングなしの証書では、RE100報告に使えない可能性があります。

発電所の新旧(追加性):2022年以降、RE100の技術要件が改定され、環境証書で再エネ電力を調達する場合、その発電所の運転開始年が調達年から起算して15年以内であることが求められています。これは単に昔からある大型水力発電の証書を買うだけでなく、新しい再エネ発電所を増やすような契約(追加性の高い調達)に誘導する狙いです。

日本では古くから稼働している水力発電所の電力を主体にした小売メニューを大手の電力会社が販売していますが、RE100の要件を満たさなくなる可能性があります。契約前に電力会社へ「この電源は運転開始何年の設備ですか?」「トラッキング情報は付きますか?」と確認することが重要です。

料金と契約条件 – コスト増への社内合意と契約期間の確認

再エネ電力への切替で料金単価が変わる可能性があります。従来より割高なプランもありますが、競争により割高幅は縮小しており、一部では従来プランより安価な再エネメニューも登場しています。実例として、非化石証書100%プラン採用で4%コスト削減した企業もあります。

重要なのは、年間でどの程度コストが変動するかを事前に試算し、社内で合意を得ておくことです。経営層への説明では「年間○%のコスト増でどれだけの排出削減効果・評価向上が得られるか」を数値で示すと、投資として納得感を得やすくなります。

また、契約期間の縛り(○年間解約不可等)や中途解約ペナルティの有無も確認しましょう。将来的に設備計画や事業方針が変わる可能性を考慮し、柔軟性のある契約条件を選ぶことも検討すべきです。

証明書類の発行と記録 – エビデンスを手元に残す

契約後に電力会社から提供される再エネ供給証明書や非化石証書の番号リストを必ず受領・保管してください。これが監査対応や取引先説明の命綱になります。

監査人や取引先から「再エネ電力を使っています」という主張に対し、証拠となる書類(非化石証書の一覧や発行番号、供給証明書など)の提示を求められることがあります。電力会社によっては証書の写しや購入証明書を発行してくれますが、準備していないと回答に窮することになります。

また、環境価値の二重計上は厳禁です。監査では証書が自社名義で償却済みか確認されます。証書の管理台帳を整備し、報告の際には証書IDや発電源情報を提示できるようにしておきましょう。

社内外への説明はこう準備しよう(合意形成のポイント)

再エネ電力導入を社内決裁し、かつ取引先にも報告していく上で押さえるべきコミュニケーションポイントを解説します。

社内向けビジネスインパクトの整理 – コストと効果を見える化

経営層や関連部署に提案する際、コスト増減やCO2削減量、得られるメリットを定量的に示すことが重要です。

例えば「年間○万kWhを再エネ化することで、電気代は○万円増加しますが、約□□tのCO2排出削減が見込まれます。これによりCDPスコアの維持や、主要取引先からの是正要求回避が期待できます」といった形で、トレードオフをわかりやすくまとめます。

他にも設備更新や省エネ投資案がある中で、優先順位のすり合わせも必要です。短期で成果が出やすい施策として電力切替を「第一段階の施策」、その後自家消費太陽光等を「第二段階」と位置付け、両方の必要性を示す計画立案が求められます。

取引先へのアカウンタビリティ – 証明資料と説明文の準備

再エネ化しましたと伝えるだけでなく、取引先が納得できる客観的資料を提示することが重要です。

非化石証書のコピー提供や、請求書上のCO2排出係数表示(0トン)の活用など、具体的な説明手段を用意しておきましょう。取引先(特にRE100加盟企業や国際的企業)は、「あなたの再エネ調達は当社の基準に合致するか」を細かくチェックします。

証書がFIT非化石証書(追跡あり)なのか、非FIT再エネ証書なのかで評価が変わる場合があります。また、どの年度の発電に対応する証書か(調達年と同じ年度か)を見られることも。事前に取引先の要求水準を把握し、それに沿う形で証書や契約を選びましょう。

まとめ – 電力切替から始める脱炭素アクション

おさらい: なぜ電力切替が第一歩なのか

RE100対応や脱炭素経営において、電力契約の見直しが最初に検討される理由を改めて整理します。

手軽だが効果大:設備投資不要で契約変更のみで実施でき、購入電力由来のCO2排出という大きな排出源を短期間で削減できます。

証書で見える化でき安心:適切な非化石証書を取得・管理することで、第三者への証明も可能になり、監査や取引先評価にも対応できます。

まずやってみて次の展開へ繋げられる:電力切替で成果を出した後、余力があれば自家発電設備やPPAなど、より追加性の高い施策へステップアップできます。

次の一手: 貴社の場合は?

電力切替は脱炭素の第一歩として非常に有効ですが、企業ごとに最適なアプローチは異なります。使用電力量、契約区分(低圧・高圧・特高)、拠点の分散状況、予算、取引先からの要求水準など、様々な条件を踏まえた検討が必要です。

注意事項:再生可能エネルギー電力の導入によって電力使用に伴うCO2排出は実質ゼロとなりますが、事業全体としてのカーボンニュートラル達成には、燃料使用など他の排出源への取り組みも必要です。本施策はその第一歩であり、段階的に脱炭素を推進することが重要です。

また、本記事で紹介する電力切替によるCO2削減は、環境価値証書の購入・利用を通じて実現するものです。物理的には従来と同じ送電網から給電されますが、証書により再生可能エネルギー由来の電力を使用する形に等価とみなされます。

まずは現在の電力使用状況を把握し、再エネ電力への切替でどの程度のCO2削減とコスト影響があるか試算してみることから始めましょう。

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