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中小製造業の電気代高騰対策:電力会社切替で実現するコスト削減と脱炭素経営
深刻化する電気代高騰、中小製造業の経営を直撃
近年、電気料金の急激な値上がりが続いています。燃料費調整額の上昇や再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の増加により、企業の電気代は経営を圧迫する水準まで高騰しています。特に、生産ラインの稼働に大量の電力を必要とする中小製造業にとって、この電気代高騰は利益率の低下や事業継続の危機に直結する深刻な課題となっています。
しかし、2016年の電力小売全面自由化以降、私たちには電力会社を自由に選べる選択肢が与えられています。適切な電力会社への切替によって、年間で数十万円規模のコスト削減を実現できる可能性があります。本記事では、電気代高騰の背景を整理したうえで、中小製造業が今すぐ取り組める「電力会社の切替」という対策について、専門的な視点から実践的な情報をお届けします。
電気代高騰の3つの主な要因
1. 燃料価格の高騰(海外情勢・円安)
発電用の石油・LNG・石炭など、化石燃料の価格が世界的に急騰しています。背景には、コロナ禍からの需要回復やウクライナ危機による供給不安があり、加えて円安が燃料の輸入価格をさらに押し上げています。日本は発電の大部分を化石燃料に依存しているため、燃料費の上昇がそのまま電気料金に反映される仕組みになっています。
2022年には燃料費調整制度を通じて電気代が一気に跳ね上がり、「電気代値上げ時代の始まり」と評される状況となりました。国際的なエネルギー市場の変動が、国内の電気料金に直接影響を与え続けています。
2. 再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の増加
再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)の費用を賄うために、電気使用量に応じて課される再エネ賦課金が年々上昇しています。制度開始当初の2012年度は1kWhあたり0.22円でしたが、2022年度には3.45円に達し、2025年度には約3.98円/kWhに引き上げられています。
電気を多く使う企業ほど負担が増える構造となっており、製造業にとっては無視できないコスト要因となっています。
3. 国内の電力供給力不足と制度面の変化
東日本大震災以降、多くの原子力発電所が長期停止し、老朽火力発電所の休廃止も相次いだことで、日本全体の発電供給余力が低下しました。供給力が細ると、予備の電力確保や燃料逼迫時の調達コストが増し、そのコストが電気料金に転嫁されています。
さらに制度面でも、近年は電力各社が相次いで規制料金プラン(従来契約)の値上げ認可を受けたことや、政府による一時的な電気料金補助策が終了したことが電気代上昇に拍車をかけています。実際、2023年には大手電力会社が家庭向け規制料金を平均15〜40%もの大幅値上げを実施しました。
中小製造業が特に影響を受ける理由
高圧契約特有の基本料金負担
一般家庭や小規模店舗は低圧契約ですが、工場など一定以上の電力を使う事業所は高圧(6,600V受電など)で契約します。高圧契約では、契約電力(最大需要電力)に応じた基本料金の占める割合が大きく、ある月に生産設備をフル稼働させてピーク電力が跳ね上がると、その値がしばらく契約電力として固定され基本料金が上がってしまいます。
従来の地域電力会社との契約では、一度記録した最大電力が12か月間も契約電力(最低支払基準)になり得るため、稼働パターンのばらつきがある中小工場ほど基本料金の負担が重くなる傾向があります。
平日昼間中心の稼働パターンの不利
製造業の多くは平日昼間の稼働が中心で、電力需要が高まる時間帯に大量の電気を使います。時間帯別料金などがあっても、夜間や週末を有効活用できる業種に比べると恩恵を受けにくい場合があります。空調や動力設備を止めるにも限界があり、省エネ投資にも資金的余裕がない中小企業ほど、電気代高騰への耐性が低い状況です。
産業向け電気料金単価は、2010年比で2022年時点で約92%も上昇しており、製造業など産業界へのコスト負担増加が顕著です。電気代高騰は中小製造業の収益を直撃し、企業努力だけでは対応しきれない深刻な課題となっています。
電力会社切替による電気代削減の仕組み
新電力が安価な料金を提示できる理由
2016年の電力小売全面自由化により、地域の大手電力会社以外にも自由に電力の購入先を選べるようになりました。現在では全国で700社以上もの小売電気事業者(新電力)が存在し、そのうち200社以上が高圧契約に対応しています。
新電力会社の多くは自社で大規模な発電所を持たず、卸電力取引所(JEPX)からの調達や独立系発電事業者からの直接購入によって電力を確保しています。巨額の設備投資を抱えない分、市場価格に応じて柔軟かつ競争力のある料金設定が可能となります。
企業ごとの電力使用パターンに合わせたプラン提供
大手電力では画一的な料金体系だったものを、新電力なら「夜間割安プラン」「週末割引プラン」など需要に合わせ細分化し、企業ごとの電力使用パターンに合った料金メニューを提供できます。無駄のない契約によって、結果的に電気料金の削減につながります。
例えば、従来より細かい時間帯別料金や、基本料金が安価な代わりに電力量料金が高めといった様々なプランを選択できます。自社の年間負荷パターンによって有利な料金体系は異なりますので、1年間の電力使用実績をもとにシミュレーション比較することが重要です。
契約電力の柔軟な見直し
新電力では、契約電力の算定ルールが独自で柔軟な場合があります。例えば「直近3か月の平均最大需要で契約電力を見直せる」等のルールがあれば、無駄に高い基本料金を減らせます。現在の契約電力が実態よりも過大になっていないかをチェックし、新電力に乗り換える際は契約電力の設定を適切に見直すことで、大幅な基本料金削減が期待できます。
電力会社切替にまつわる誤解と真実
誤解①「手続きや設備変更が煩雑なのでは?」
実際はとても簡単です。 電力会社の切替手続きは新しい電力会社が代行してくれる場合がほとんどで、現在契約中の会社への解約通知などもまとめて行われます。スマートメーターが既に設置されていれば工事も不要で、遠隔操作により契約先だけが切り替わります。工場の受変電設備(キュービクルなど)を交換したり、新たな配線工事をしたりする必要は一切ありません。
誤解②「電気の品質や安定供給に不安がある」
供給の安定性は今までと変わりません。 電力の品質(電圧や周波数)や停電対応は、送配電網を管理する地域の送配電事業者がこれまで通り担います。契約先がどこであっても、電気そのものは同じ送電線を通じて届くため、照明の明るさが変わったり機械が誤作動したりといった心配は不要です。
また仮に乗り換え先の新電力会社が経営破綻するような事態になっても、「最終保障供給」の仕組みにより地域の大手電力会社が電気の供給を継続することが定められており、突然電気が止まって操業不能になることはありません。
誤解③「新電力はどこも経営が不安定でリスクが高いのでは?」
確かに注意は必要ですが、選択肢は豊富にあります。 近年、卸電力市場価格の高騰に耐えきれず小規模な新電力が電力供給事業から撤退したり、倒産したケースが相次ぎました。しかし一方で、地域自治体が出資する地域新電力や、大手企業系列・上場企業が運営する新電力など、財務基盤が比較的安定しており長期的な供給実績を持つ事業者も多数存在します。
乗り換えの際は「電気料金の安さ」だけでなく、会社の信頼性や過去の供給トラブルの有無、提案内容の根拠なども確認しましょう。
契約比較時の重要ポイント
料金プランの種類(固定 or 市場連動)
提供プランが「固定単価型」か「市場連動型」かを確認しましょう。固定単価型は契約期間中の電力量料金単価が一定で、価格変動リスクが小さいのがメリットです。一方、市場連動型はJEPX等の卸市場価格に連動して料金単価が月々変動します。市場価格が安い時期には大幅な節約になりますが、燃料高騰などで市場価格が跳ね上がると料金も上がるため不確実性のリスクがあります。
自社の経営方針やリスク耐性に照らして適切なタイプを選びましょう。
基本料金と従量料金のバランス
プランによって基本料金の額や計算方法が異なります。年間使用量が多いほど削減メリットは大きくなり、契約電力が過大設定になっている場合には見直しで基本料金の大幅カットが期待できます。また、時間帯別・曜日別の細かな料金設定を用意しているところもあります。自社の電力使用パターン(何時から何時まで稼働が多いか、休日はいつか)を把握し、それにマッチする料金メニューがないか探してみてください。
CO2フリープランの検討
契約メニューによっては、再生可能エネルギー由来の電力や非化石証書付き電力を供給し、その電力使用によるCO2排出量を実質ゼロにできるプランがあります。自社の環境目標(カーボンニュートラル宣言等)や取引先からのグリーン調達要請がある場合、このCO2フリープランを選ぶメリットは大きいでしょう。
最近は非化石証書の価格低下や各社の企業努力により、通常プランとほとんど変わらない料金でCO2フリー電力を提供する新電力も増えています。
脱炭素・地産地消にも寄与する切替のメリット
環境面:脱炭素(カーボンニュートラル)への寄与
日本全体で2050年カーボンニュートラル目標が掲げられる中、企業にも温室効果ガス排出削減が求められています。電力起源のCO2排出は製造業にとって大きな割合を占めますが、電力会社を切り替えて再エネ電力・CO2フリー電力を調達すれば、その部分の排出を実質ゼロにできます。
例えば、非化石証書付きで供給する電力であれば、工場で使用する電力由来のCO2排出量をゼロにでき、取引先や社会に対して「自社は再生可能エネルギー利用で脱炭素に貢献しています」と胸を張って言えるようになります。これは企業のCSR(社会的責任)やESG対応としても高く評価されるポイントです。
地域経済:エネルギーの地産地消推進
地域新電力に代表されるように、地域で発電した電気を地域の産業や家庭で使う仕組みが各地で広がっています。エネルギーの地産地消には、エネルギー代金の地域外流出を防ぎ地域経済を潤すという効果があります。
従来、電気料金として支払ったお金は大手電力会社を通じて燃料代などに消えていましたが、地域新電力を介せばその利益が地元に還元されます。また、再エネを地域で開発・利用すれば、化石燃料価格や為替レートの影響を受けにくい安定した電源を持てることになります。
まとめ:まずは情報収集と見積もりから始めましょう
電気代高騰の背景には、燃料費高騰や円安、再エネ賦課金の上昇、供給力不足や制度変更といった複合的な要因がありました。特に中小の製造業にとって電気代の負担増は深刻ですが、その一方で電力会社の切替という選択肢によってコスト削減の余地が広がっています。
実績のある新電力会社や地域電力を活用すれば、電気料金そのものの引き下げとともに、再エネ電力の調達による脱炭素や地域経済への貢献といった副次的なメリットも得られます。電気代削減は利益率の改善に直結する有効な手段であり、エネルギーコストの最適化は企業競争力の向上にもつながります。
「とはいえ何から始めればいいのか…」という方は、まず信頼できそうな電力会社やエネルギーコンサルタントに問い合わせてみることをおすすめします。多くの新電力では電気代シミュレーションや見積もり提案を無料で行ってくれますし、実際に数字で比較することで削減ポテンシャルが具体的に見えてきます。
電気代高騰という逆風に対し、待っているだけでは状況は好転しません。ぜひ今日から動き出して、電力会社の切替によるコスト削減にチャレンジしてみてください。適切な対策を講じることで、中小製造業でも電気代の負担を軽減し、浮いた資金を本業の強化や設備投資に振り向けることが可能になります。専門的なことが絡む分野ではありますが、次の一歩(相談・見積もり依頼等)を踏み出すことで、持続可能な経営への道が開けていくことでしょう。
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